5年と3ヶ月住んだ部屋から、引っ越しました。
理由は一般的なところで言う「気分転換」です。引っ越すのは徒歩5分の近所。
ちょっと前は早く引っ越したい一心でしたが、長く住んだこともあり、最後の数週間は惜別の気持ちが募りました。
上京してからずっと住んでいた部屋だし、結婚してはじめて二人で住んだ部屋でもありました。このブログも、この部屋で開設しました。
いろんな感情がこの部屋で渦巻きつつ、今まで平和に暮らしてこれました。
206号室に、さようなら。
この部屋は以前勤めていた会社から充てがわれたものだった。住む地域も含めて、くじ引きで引き当てたようなものだ。
僕と同じ誕生年に建てられたマンションで、部屋の作りも少し古い。
建具やキッチンなどは建設当時からのものだと思われるが、僕はこの頃のそれが結構好きだ。チープな建材があまり使われておらず、そこそこ味があるからだ。
渡り廊下から隣のマンションの桜が見えるのが好きだった。6回も見た。最初の桜を見た頃に小学校に入学した子達は、もう6年生だと思うと、長い間住んだなあと感慨深くなる。
リビングには2.5Pの大きめのソファを置いた。横にもなれるし、だらっとも座れる。
東向きの部屋で、午前中はよく光が入る。
窓際にレコードとターンテーブルを置いていた。余裕があるときにソファに座りながらレコードをかけるのが好きだった。
ダイニングテーブルがあるのに、おおよそ食事もここでとった。ソファの前に並んで座って、テレビを見ながら食べるんだ。
和室の名残からか、押入れが多かった。物が多い夫婦でも、収納には困らなかった。
ただデスクの配置が難しくて、いつの間にか押入れをデスクとして使うようになった。普段は開けっ放しにして使っていたためか、空間に奥行きができて良かったと思う 。だいたい散らかっていて、来客時は閉めたりできて便利だった。
デスクはソファの後ろにあって、振り向いたら妻がソファに座っているというのが、よくある光景だった。
なかなか広いベランダだった。半ば廃材置き場にしてしまっていたが、こんな世の中になってから植物にはまり、ここ1年くらいは植物で溢れた。
キッチンの隅っこで座り込む妻をよく見た。
ここに引っ越してきて早々、妻が流しの上の棚から物を落として怪我をしたのを覚えている。近くの病院の夜間外来にお世話になった。
妻は数千回ここで料理をした。
ダイニングテーブルで食事をとる回数は少なかったが、真剣な話をするときはだいたいここだった。
寝室は四畳半で、ダブルベッドを置いてぎゅうぎゅうだった。
薄暗く、僕としてはあまり好ましいところではなかったけど、今になるとあの独房のような狭さも懐かしい。
5年3ヶ月も住んだ賃貸ははじめてだった。
一人暮らしを含め、4つ目の賃貸物件だが、引っ越しの度に物悲しくなる。実家が持ち家だったことも関係していると思うが、住まいは自分の所有物という意識が強い。引っ越しのとき、他人のものなんだよなと認識する。もう何ヶ月か後には、こんなに愛着ある部屋に他の誰かが住んでいる。
僕も妻も、お互い捉え方や重視する部分は異なるけれど、物や場所への思いが強い方だと思う。
駅からマンションまでの道や、渡り廊下から見える桜、狭い寝室、押入れ、帰ってくるとキッチンにいる妻、とか。部屋や家具に蓄積する時間に、安心を見出すこともあるものだ。
去年体調を崩さなければ、もう少しこの部屋に住んだかもしれないし、妻はとても寂しそうにしていたから引っ越しは申し訳ない。そうは思いつつ、蓄積した時間を振り払うことで出会える何かもあるはずで、今回の引っ越しに後悔はない。
特に自分の部屋をテーマに写真を撮っていたわけでもないけど、スマホを含む色んなカメラでの色んな写真があったので、たくさん載せてみました。
改めて良い空間と時間でした。
もうあの玄関を開けることがないと思うと、寂しいものです。妻ははじめて実家を離れて住んだところで、僕より居た時間も長く、思い入れが強いと思います。
近隣住人も大家さんも良い人で、過ごしやすかったです。
206号室に、さようなら。
お世話になりました。ありがとうー。